結論ありきの身勝手な記事にバッシングの嵐
ソフトバンクモバイルが、2月27日からスタートさせた日本市場向けiPhone購買販促キャンペーン「iPhone for everybodyキャンペーン」を全国のソフトバンクショップや家電量販店で強力にプッシュするなか、Wired.comに掲載された「Why the Japanese Hate the iPhone」(なぜ日本人はiPhoneが嫌いなのか)という記事がちょっとした話題になっています。
Wiredの記事の中では、iPhoneは日本人からみると、月々のデータプランが高く、機能が不足していて、カメラ品質が悪く、さらにデザイン性が低いうえに、何と言っても日本製では無いなどといった理由で不人気であると論じられています。
同記事を書いたBrian X. Chen氏は、「iPhone for everybodyキャンペーン」についても、日本市場の現実にかみ合っていないとするアナリストの言及を引用して一蹴し、さらには、全世界で「iPhone 3G」が力強いセールスを示すなか、日本だけ唯一販売台数が伸び悩んでいるのは昨年7月の発売前から指摘されていたことであり、NokiaやMotorolaなどを寄せ付けないガラパゴス諸島市場への参入には障壁が高かったと述べています。
記事がもしここまでだったなら、Brian X. Chen氏の名誉もそれほど傷つかなかったかもしれませんが、同氏は記事の中で、しっかりとした取材を行なわずして、News2u.net取締役の平田 大治氏やApple事情に精通したフリーランスのITジャーナリスト林 信行(Nobi)氏のコメントを、勝手に都合良く改ざん、もしくはねつ造して「iPhoneを日本で持っているとlameだ(ダサい)」(平田氏)、「日本でiPhoneが不人気なのは、米国人にPanasonicのP905iを見せたら納得したよ。だからこそ、(影響力のある)私がクールに見えるようにセッティングしている」(林氏)などと記事で紹介。
AppleInsiderに詳しい経緯が掲載されていますが、平田大治氏や林信行氏は、自身のWebサイトやブログ(平田氏、林氏)ですぐさま記事内容の誤りを指摘し、その後Wiredのねつ造記事事件はネットを駆け巡って、各所で一大総スカンを食らう羽目に至っています。
林氏は、自身のブログの中で、外出先でたまたまTwitter経由でこの勝手な記事を発見して、Wiredへ反論したという経緯を自身のビジョンなども盛り込んで紹介しています。
このような勝手な引用は、日本のテレビ、雑誌やWebでも日常茶飯事で、泣き寝入りしてしまう人も多いかもしれないが、あいにく、私や平田さんは、おそらく米国Wiredの若輩ライターよりかは、人脈も持っていれば、ブログを通しての影響力も持っている(それらを持っていない人に、泣き寝入りしろ、ということではない。今の時代は、感情的にならずに頑張ってうまく反論すれば、声が世界に通じる時代だと信じている)。
その後、問題となったWiredの記事は、一部内容が変更されたものの、現在も掲載されたままです。
【追記】
今回誤った引用を掲載された平田氏は、さきほど自身のブログに、今回の「Wired 騒動」に対する自身の意見や経緯などを掲載しました。
同氏は、今回のWired.comおよび記者の姿勢は残念であり、掲載記事の内容を訂正したりコメント欄を勝手に閉じたりするなら、その経緯や謝罪の言葉などを織り込むべきであって、今回のような対処によって各方面で不信感を増幅したばかりか「ジャーナリズム的な視点」からも批判される状況に陥ったと指摘しています。
同氏はさらに、ブログやネットといったメディアは透明性が高いとしたうえで、インターネット社会に対して次のような警鐘を鳴らしています。
情報があまりに早く広まるため、情報の伝搬速度のほうが注目され、情報を早く出すことがなにより重要だと思われるかもしれませんが、それ以上に情報が広まったあとも残りつづけることのほうがより重要になってきますし、すでにそうなりつつあります。
【Tsugawa.Tv’s Vision】
今回のWiredの記事により明らかになったのは、iPhoneが日本で人気がないということではないでしょう。
少なくとも日本のジャーナリストのレスポンスの素早さとそのグローバルなネットワークにおける存在価値を示すことにはなったようです。