アーサー・レビンソン氏はAppleを選択=反トラスト法抵触の恐れから
Googleは10月12日(米国時間)、2004年4月から同社取締役を務めて来たバイオ医薬品大手Genentechの元CEOアーサー・レビンソン (Arthur Levinson) 氏が同職から退任すると発表しました。
レビンソン氏は、Appleの取締役も2000年8月から務めており、同氏の5年以上に渡るAppleとGoogleの取締役兼任については、米連邦取引委員会(FTC=Federal Trade Commission)が独占禁止法違反の可能性があるとして調査していました。
AppleとGoogleは近年、スマートフォン(iPhone vs. Android)や、OS(Mac OS vs. Google Chrome)、ウェブブラウザ(Safari vs. Google Chrome)などをはじめ、多くのインターネットサービスで競合する分野が増えて来ています。
米独禁法(1914年制定のクレイトン法第8条)では、自由競争を阻害するとして、競合関係にある2社の取締役を兼務することを禁じており、AppleとGoogleの中核事業が重複していることが問題視されていました。さらに、両社ともにMicrosoftの最大のライバルでもあることから、投資家やコーポレートガバナンス専門家から厳しい視線を受けていました。
両社の取締役兼任をめぐっては、今年8月にもGoogleのエリック・シュミットCEOがおよそ3年間に渡り務めてきたApple取締役を辞任しており、今回レビンソン氏がGoogleの役員を退任したことで重複する取締役はいなくなったことになります。
Appleのスティーブ・ジョブズCEOはシュミット氏の退任について、「潜在的な利害の衝突を避けるため、議題に参加できる回数が減少していた」と指摘し、シュミット氏もiPhoneが議題になる時には取締役会議には出席していなかったと述べていました。
もっとも、Appleの取締役を務めるIntuit社のビル・キャンベル会長は、Googleの取締役ではありませんが、例外的にGoogle社の取締役会議にも出席しているとされています。同氏は以前、AppleでClarisソフトウェア部門(現FileMaker)を受け持っていたことでも知られています。
GoogleのシュミットCEOは今月、レビンソン氏がこのまま両社の取締役を兼務しても問題無いという見解を示して、自らのApple取締役退任については、いかなる圧力のもとで退いた訳ではないと述べていました。
● ジョブズ氏は安堵
Appleの取締役は、同社CEOのスティーブ・ジョブズ氏をはじめ、Genentechの元CEOアーサー・レビンソン氏、Intuitのビル・キャンベル会長、アル・ゴア元副大統領、Avonのアンドレア・ジュングCEO、クライスラー元CFOのジェロム・ヨーク氏、J.クルーのミラード・ ドレクスラーCEOによって構成されていますが、実力者であるエリック・シュミット氏に続いて、レビンソン氏を失うことになれば、Appleとジョブズ氏にとって大きな痛手になるところでした。
Appleの内規では、取締役員は5〜9人とすると記載されており、実質的に7〜8名で構成されてきました。
AppleとGoogleの親密な関係が反トラスト調査の対象にされる一方で、両社は最近、iPhoneアプリ「Google Voice」のApp Storeでの非承認問題や、Appleによる地図サービスPlaceBase買収などで関係が悪化しているようだとも指摘されています。