サイズも価格も半分程度のライト版=Androidに対抗
Appleが、次期「iPhone 5」と平行して、現在の最新モデル「iPhone 4」の半分程度の小型サイズで、より安価なスマートフォンを開発していると噂になっている。同社は、ハイエンドモデル以外の選択肢を顧客に与えることで、全世界でシェア争いが一層激化する高機能電話機市場において、Google「Android」やNokiaなど競合企業に対抗する狙いがあるとみられる。
14日付けのWSJによると、Appleが開発中とされる開発コード名「N97」と呼ばれる試作機は、 デバイス全面が「端から端まで」タッチパネルとなっており、大幅な軽量化が図られているという。また、iOS 5.0に搭載されると噂される新しいボイスナビゲーション機能を搭載し、価格は現行モデルの半額程度が予想され、今年夏頃に市場投入される見通しだという。この小型iPhoneが、「iPhone 5」と並んで、実際に店頭に並ぶことになるかどうかは不透明だが、Appleは米国において今年2月、従来のAT&Tに加えて、Verizon WirelessからもiPhone 4を発売させるなど拡販路線を推進している。
また、Bloombergも試作機の目撃記事を掲載しており、同プロトタイプはiPhone 4の約3分の2ほどのサイズでホームボタンが無く、本体価格はキャリアとの2年契約無しで200ドル程度に抑えられるという。このような安価で手軽に入手できるカテゴリの追加は、中国やインドなどの新興国向けには大きな意義があるとみられる。しかし、同戦略は数年前からたびたびクパチーノで議論されてきたが、結局商品化されることは無かった。
次期フラッグシップモデル「iPhone 5」では、ARM アーキテクチャのCortex-A9をクアッドコアで搭載し(1.2GHz以上で動作)、グラフィックスプロセッサにはImaginationのデュアルコア「SGX543」が採用されるとみられている。
また、2つの携帯電話規格(GSM/CDMA系)に対応するデュアルバンドが採用され、ユニバーサルSIMに対応する可能性も指摘されている。
小型iPhoneの具体的な仕様は不明だが、すでに携帯電話の総出荷数の20%を占めるスマートフォン市場で、Appleのグローバル戦略の具体化が急がれるのは確かだ。
iPhoneの拡販路線については、実質的にソフトバンクモバイルの独占販売が続いている日本市場で、マルチキャリア戦略を取り入れるかどうかも焦点となりそうだ。ドコモやKDDIからiPhoneが発売されれば、現在よりデバイス本体が3倍多く売れるとの試算もある。少なくとも年内に米国同様日本でもマルチキャリアが実現できなければ、日本国内では、急成長するAndroid勢に一気に押しつぶされる可能性も高まる。
WSJの記事では、AppleはiPhoneのアップデートと平行して、有料クラウドサービス「MobileMe」もテコ入れをする予定だという。GoogleやMicrosoftなどが、多機能なクラウドサービスを無償で提供する現状において、「MobileMe」の存在意義が薄れていたのは事実であった。iPhoneのアップデートとMobileMeの改良は、現在療養中のスティーブ・ジョブズCEO肝いりのプロジェクトだとされている。
「MobileMe」の具体的な改良点として、サービスの無償化、iOSデバイスとのiTunesライブラリ・ワイヤレス同期機能、ソーシャルネットワーキングとの連携などが挙げられている。