Appleは今月19日、「iBooks 2」と「iBooks Author」を発表してiPadを電子教科書としてプッシュする方向性を示したが、Bloombergは29日(現地時間)、iBookstoreにおける1冊あたり14.99ドルという価格は一見すると安価にも思えるが、学生一人分の1年コースしかカバーされておらず、また、学生はiPad本体の購入金が必要なほか、使用済み教科書を売ることもできないため、結局のところ安くはならないと報じた。
iBookstoreではHoughton Mifflin Harcourt、McGraw-Hill、Pearsonなど米大手教育出版社の教科書が14.99ドル以下で販売される方針だが、Appleは教科書業界を破壊するというよりはむしろ、年間100億ドル市場ともいわれる企業連合に参加しただけのようだとも指摘されている。
米国の教科書価格は1986年から2004年にかけて186%も上昇しており、ごくわずかの大手出版社が高等教育向け教科書市場を独占する一方で、海外の安価な出版社の参入を阻むなど、既得権益者による支配が「教科書の再発明」を歪める可能性があるようだ。
また、Appleの電子書籍配信サービスは、安価な価格で発行できるので大手出版社には歓迎されるが、iBooks 2のフォーマットが独自版ePUB形式しかサポートしておらず、また、iBookstoreで売る際にはAppleが売上の30%を徴収するなど、完全にオープンな環境ともいえないようだ。
業界全体に電子教科書の占める割合は2011年時点でわずが5%未満であり、2012年が電子教科書の普及・改革元年となるのか、その原動力にAppleが関与できるのかが注目される。