Retinaディスプレイ、LTE対応、1080p撮影、日本市場価格は値下げ
Appleは3月7日(現地時間)、米サンフランシスコYerba Buena Center for the Artsでプレス向けの新製品発表イベントを開催し、第3世代目となる新型「iPad」などを発表した。
イベントに登壇したティム・クックCEOは「ポストPC革命」について語り、『もはやPCがデジタルワールドの中心ではなくなった』と述べ、Appleはすでに収益の76%をパソコン関連以外のiPhone/iPad/iPodなどの非PCから得ていることを明らかとした。
クック氏はさらに、2011年第4四半期だけで1,540万台のiPadを発売し、『iPadだけでHPやLenovoといったどのPCメーカーよりも多くの製品を出荷した』と述べた。
新しい「iPad」
新しい「iPad」は、2,048×1,536ピクセル(310万画素)のRetinaディスプレイを搭載し、従来のピクセル数の4倍となるフルハイビジョン表示を超える解像度を実現。彩度が44%向上し、既存アプリのテキストは自動で高解像度版に置換えられるという。
ホームボタンがあるなど、外観デザインに変化は見られないが、新しいバックライトシステム採用により「iPad 2」よりも若干重くなり(+50g)、厚みも増した(+0.6mm)が、気にならない程度と思われる。また、日本語を含む音声入力にも対応する。本日より事前予約受け付けを開始し、3月16日に発売となる(プレスリリース)。
SoCには、4GPUコア(クアッドコアグラフィックス)版「A5X」が搭載され、「iPad 2」や「iPhone 4S」に搭載されている「A5」よりもグラフィックス性能が2倍、NVIDIAの「Tegra 3」よりも4倍高速だという。また、低消費電力設計により消費電力を抑えることでバッテリ寿命は前モデルと同じ10時間(4G接続時は9時間)を実現した。なお、GPUのコア数は4基となった一方で、CPUはデュアルコアのまま据え置かれている。そのため、チップ名も「A6」とはせずに「A5X」と命名された模様だ。
カメラ機能は、背面メインのiSightカメラが有効5Mピクセル(裏面照射型CMOSイメージセンサー)にアップグレードされ、HDビデオ(1080p/30fps)録画もサポートする。また、新たに手ぶれ防止、IRフィルター、オートフォーカスおよびホワイトバランス、顔認識などが追加された。なお、正面カメラは旧モデルと同じ仕様だ。
ワイヤレス通信方式として4G LTEに対応するほか、Bluetoothがアップデートされv4.0をサポートする。Wi-Fi+4GモデルはUMTS/HSPA/HSPA+/DC-HSDPA(850、900、1,900、2,100 MHz)、GSM/EDGE(850、900、1,800、1,900 MHz)をサポートする。Verizon、AT&T、Rogers、Bell、Telusなどの海外キャリアで4G通信に対応するが、ソフトバンクは不明。また、現在のところ、KDDIの名前も見当たらない。
価格はWi-F-版は16GBが499ドル(4万2,800円)、32GBが599ドル(5万800円)、64GBが699ドル(5万8,800円)、Wi-Fi+4G版は16GBが629ドル(5万3,800円)、32GBが729ドル(6万1,800円)、64GBが829ドル(6万9,800円)で、カラーはこれまで通りのホワイトとブラックが用意される。円高が考慮され、日本市場の価格は「iPad 2」よりWi-F-版は2,000円、Wi-Fi+4G LTE版は3,000円前後値下げとなった。
なお、新型「iPad」は、単に“新しいiPad”または“新しい第3世代のiPad”と呼ばれており、「iPad 3」や「iPad 2S」、「iPad HD」などと呼ばれることは無かった。
また、前モデル「iPad 2」(16GBモデルのみ)は価格を引き下げて販売が継続され、新価格はWi-Fiモデルは399ドル(3万4,800円)、Wi-Fi+3Gは529ドル(4万5,800円)で用意される。
Apple純正アプリがアップデート
新しい「iPad」発表にあわせて、「iPhoto for iPad and iPhone」がリリースされるとともに、「GarageBand」や「iMovie」、「iWork」アプリがアップデートされた。
新しい「iPhoto」アプリは、色や露出の調整、トリミング、傾き補正、レタッチなどプロフェッショナルなエフェクト類が充実し、タッチ&ドラッグのマルチタッチ編集、指先で操作できるブラシモードなどが特徴。価格は450円。
また、新しい「GarageBand」はiCloudとの連携やSmart Strings機能が加わり、「iMovie」は予告編作成機能が加わった。一方の「iWork」(Pages/Keynote/Numbers)はRetinaディスプレイのサポートが加わり、3Dチャートや3Dの横棒グラフなどが作成できる。
そのほかにも高解像度パネルをサポートする「iBooks 2.1」や「iBooks Author」がリリースされた。
「iOS 5.1」、Siriの日本語対応などが追加
「Siri」が「iOS 5.1」搭載「iPhone 4S」で日本語をサポートをすることも発表された。
音声認識アシスタント機能「Siri」は、昨年10月の「iPhone 4S」発表時に目玉機能として紹介されたが、日本語の対応は先送りされていた。今後2〜3週間で利用可能になる予定だ(*Update:すでにiPhone 4Sで利用可能)。
「iOS 5.1」ではこのほかにも、ユーザからリクエストが多かったフォトストリームから写真を削除できる機能が加わり、iOS 5.0から問題となっていたバッテリ寿命に影響するバグを解決したとされている。
新しい「Apple TV」
新しい第3世代セットトップボックス「Apple TV」は、米国市場価格は99ドル(8,800円)のまま据え置かれ、本日より事前予約受け付けが開始され、3月16日に発売となる(プレスリリース)。
予想通り“1080p”フルHD動画出力のサポートが加わり、新しいユーザインターフェイスが搭載される。また、プロセッサはシングルコア「A5」チップが搭載され、iTunes in the Cloudとの連携により、iTunes Storeから1080pの映画やテレビ番組を視聴できる。なお、iTunes StoreアカウントならびにiTunes 10.6以降が必要。
iTunes 10.6
Appleは同日、「iTunes 10.6」をリリースした。1080pの高解像度(HD)の映画やテレビ番組をiTunes Storeから再生する機能が追加となり、iCloudからの再生時に曲がスキップされるバグが修正された。
今日の発表イベントで「新しいiPad」を紹介したフィル・シラー上級副社長は、『新型iPadは誕生して2年足らずのタブレットという我々が創り出したカテゴリを再定義する製品となる』と述べ、App Storeのアプリ総数は58万5,000件を超え、iPad向けネイティブアプリは20万件以上に達したことを明らかとした。
さらに、ハイビジョンテレビと比べても100万も多い美しいディスプレイは、『歴史上のモバイルデバイスのなかで、最高の解像度を実現』したことで、写真や動画のディテールを信じられないレベルで再現できると述べた(Apple Special Event 動画)。
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