さほど遠くない時期に発表されると思われる「iPad 3」の噂が多く聞かれる昨今だが、「iPhone 5」についてもいくつかの噂が飛び交っている。
そもそもAppleは昨年10月、「iPhone 4S」ではなく「iPhone 5」を発表するだろうと直前まで思われていたため、「iPhone 5」に関する多くの噂は、1年以上も前から囁かれ続けたものであることを忘れてはならない。つまり、デザイン的な要素を中心に、外観的にほぼ変更が無かった「iPhone 4S」と異なり、「iPhone 5」では思い切った刷新(リデザイン)が予想されている。
まずは画面サイズだが、初代iPhoneから続けられてきた3.5インチから0.5インチほど大きい4インチサイズへの変更がありそうだ。すでに多くのAndroid端末が4インチ以上の画面サイズを備えている。五世代続けてきた3.5インチをそのまま据え置くというのは考えづらいだろう。
市場調査会社Susquehanna FinancialのアナリストChris Caso氏は投資家宛のメモのなかで、Appleは今年6月に4インチサイズの次世代iPhoneの生産を開始すると分析している。
また、ディスプレイ技術として量子ドットLED(Quantum Dot LED)を採用した曲面ガラスを選択する可能性もあるようだ。Appleはすでに曲面ガラス切断機を購入していると報じられたこともあり、タッチフェイスは曲面加工されたフレキシブルなフィルムベースまたはガラス統合式(OGS)タッチパネルになるとも噂された。カーブデザインのスマホとしては、ノキアが昨年発表したWindows Phone端末「Lumia 800」のヘッドターニングデザインが記憶に新しい。Appleはおそらく画面サイズの拡大とともに、薄さや素材へのこだわりもみせるはずだ。
一方で、Cult of MacのEd Sutherland氏は、3.5インチが人間工学的にベストであると述べたうえで、Appleが画面サイズを大きくするとしても、4インチにはならないだろうと予想している。
iPhone画面の大型化は、iPadとの共存・差別化が困難になるとの指摘もあり、iOS端末全体の収益構造に問題が生じることも懸念されている。
また、パネルにはシャープが開発した酸化物半導体「IGZO」が採用されると米大手メディアが報じたが、供給はLGやサムスンが主体になるとの観測が強い。しかし、シャープ以外の日本メーカーによるパネル供給の可能性も囁かれている。
筐体についてはガラスからアルミニウムへ素材が変更され、背面パネルの縁はテーパー処理が施されることなどが予想されている。ただし、ケースデザインの噂は随分前のものであり、新たな素材の採用やデザイン面の変更も予想される。
プロセッサの刷新は間違いなく行われるとみられ、次期「iPad 3」と同じクアッドコアプロセッサが搭載されて、処理速度やグラフィックス性能の大幅な向上が期待される。また、内部メモリ(RAM)も1GBにアップするだろう。
第4世代移動通信システムLTEへの対応の可能性も非常に高い。2012年に発表されるQualcommの次世代LTEチップセットはサイズやコストダウンが図られ、iPhoneのコンパクトなプリント基板にもマッチするとみられる。
LTEチップ搭載となれば、必然的にNTTドコモからのiPhone発売が議題に上がってくる。国内ではソフトバンクモバイルからの独占販売が長らく続いたが、昨年10月よりKDDI(au)からもiPhoneが発売されるようになり、世界標準だったマルチキャリア戦略が日本でもようやく実現した。しかし、トップキャリアであるドコモからの投入を待ち望むユーザは少なくはないだろう。
NFCチップ搭載も可能性が高いとみられ、iTunesアカウントと連動するモバイル決済システムが登場すると噂されている。
そのほかにも、防水機能の追加(HzO)、カメラ機能の強化、バッテリ駆動時間の増強などが予想されており、これまで変わることのなかった物理ホームボタンがどのようになるのか、次世代データ伝送技術Thunderbolt互換ポートがI/Oに加わるのかなどにも注目が集まっている。
発売時期については、夏から秋にかけてのいずれかの時期が予想される。Appleは従来、iPhoneの“夏発売”を基本としてきたが、昨年は10月発売となった。
Piper JaffrayのGene Munster氏は発売時期を8月と予想しており、次世代iPhoneはかつてないほど大規模な刷新が行われるだろうと分析している。
iOSレベルでは、Twitterに加えてFacebook機能の統合や、モーションセンサーによる3Dユーザインタフェース搭載などが噂されている。Facebook統合に関しては、iOS 5.1でのサポートも予想されている。
ほかにも、「iPhone 5」リリース前に、音声認識技術「Siri」の日本語対応にも期待したいところだが、Appleにメールで問い合わせたが返答は無かった。Appleのウェブサイトには「2012年にサポート予定」としか記されていないため、次期メジャーOSリリースまで待つ必要があるのかもしれない。
以上取り上げた以外にも様々な噂が流れているが、故スティーブ・ジョブズ氏が死の直前まで熱心に取り組んでいたのは「iPhone 4S」ではなくオールニューデザインの「iPhone 5」であるとみられ、ジョブズ氏のビジョンが大いに反映されることとなるのは間違い無いだろう。