iPhoneハードウェア設計の責任者が突然の退社
Tony Fadell(トニー・ファデル)氏の後任として、iPod/iPhone開発グループを率いてきた元IBM幹部のMark Papermaster(マーク・ペーパーマスター)氏であったが、Appleにおける彼のキャリアは決して長いものにはならなかった。
Papermaster氏は、IBMとの訴訟問題などもあり、すんなりAppleに入社できた訳ではなかったが、iPod/iPhoneのデバイス・ハードウェア・エンジニアリング部門の上席副社長 (SVP) として、昨年の4月24日から正式にAppleに加わっていた。
同氏は、技術者として25年以上のキャリアがあり、チップ設計にも長けていた。Appleのスティーブ・ジョブズCEOは、同氏の入社の際に、「経験豊かなリーダーが経営幹部に加わることを歓迎する」と述べていた。つい、1年ほど前のことだ。
Appleの政治的ともいえる秘密主義のなか、Papermaster氏の退社の理由は明らかにされていないが、iPhone 4のアンテナ設計に関わった同氏をAppleが解雇したとの情報もあるし、時期的にみてそのようにみられても仕方あるまい。しかしながら、アンテナ性能に関する電波減衰の問題は、Papermaster氏が入社する前から認識されていたとの情報もある。ほかにも、生産の遅れているホワイトモデルが関係しているのかもしれない。
Appleでは、酷使された従業員がもし生き残れば、社内で最高の待遇を受けることができるとされるが、一方で、ジョブズ氏と偶然にもエレベーターで乗り合わせた社員が、その場で解雇を言い渡されたこともあるという。
後任には、Macハードウェア・エンジニアリング責任者であるBob Mansfield(ボブ・マンスフィールド)上級副社長が就くことになる。
アンテナ問題を巡っては、iPhone 4のアンテナバンドの左下角にある黒い線状の部分を手でさえぎった時に電波感度に問題が生じるというクレームが相次いでいたが、Appleは「ほとんどのスマートフォンで、持ち方によっては電波の強度が弱まることがある」としていた。
7月16日に行われた記者会見のなかで、S.ジョブズ氏は、「我々は完璧でないし、電話にも完璧という言葉は存在しない。特に、スマートフォンには弱点がつきものだ」とし、「ユーザの満足度を向上させることこそが我々の使命であり、Appleはユーザを愛している」と述べた。
また、iPhone 4 Bumperの無償配布や満足できない顧客への全額返金ポリシーなどを打ち出し、「iPhone 4は最高のスマートフォンであり、Appleの歴史の中で最も成功した製品」であることを強調していた。